【企業研究】その会社大丈夫? 財務で見る危ない会社のポイント3つ

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小川 修平:国内・外資投資銀行にて7年間投資銀行にて会社の買収売却(M&A)業務に関わる中で、多くビジネスや会社の実態を主に財務面から見てきました。その経験を活かし、わかりやすくビジネスや会社の見方を伝えます。株式会社UNLOCK DESIGN取締役。大分県生まれ。横浜育ち。子供3人の父。

その会社、倒産しない?

最近では、スカイマークのような割と有名な企業もあっという間に倒産してしまうこともあります。就活・転職活動中のみなさんにとっては、自分が内定をもらった企業や入りたい企業が危険な状態にないか、気になるのではないでしょうか。金融業界では、ホームページで公開されている基本的な財務情報を見ることで、ざっくりと「この企業は倒産しそうだな」「この企業は大丈夫」ということを判断しています。

今日は、そんな企業の「見るべき基本の数字」を3つ紹介します。あなたが入ろうとしている会社が財務的な観点で優良な企業なのをみるのに役立ててみてください。

上場企業であれば、ホームページ上に「IR資料」若しくは「投資家向け情報」などのコーナーがあると思いますが、そのなかから通年の「有価証券報告書」を見てください。本記事ではスカイマークを例にとって、倒産の大きな原因となったエアバス機キャンセル騒動直前期である、有価証券報告書の「第18期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)」を見てみましょう。

当期純利益から会社の儲ける力をチェックしよう

企業の稼ぐ力をみるのが、損益計算書やPLと呼ばれるものですが、その一番下に表示されている項目です。これは材料の仕入れや従業員の給与、税金の支払いなどを全部終えたあとに残った儲けです。これが赤字だと、何かしら会社の稼ぐ力に問題があるということです。

一時的な要因かどうかを見るためには過去数年の推移を見たり、損益計算書の中で少し上にある経常利益という項目を見るとよいでしょう。経常利益より下には特別損益という一過性のコストが計上されているのですが、もしそれが原因で当期純利益が赤字だとすれば、一時的な要因の可能性がありますし、逆にそういった一時的な要因ではなく経常利益が赤字ということであれば相当ヤバいということが言えます。

スカイマークでいえば、前事業年度(H25年度3月期)は「当期純利益」が黒字だったのが、今年度(H26年度3月期)は約18億円という大幅な赤字に転落しています。また今年度は「特別損失」は0.82億円しかなく、「経常利益」の水準で約4億円の赤字。つまり、ここからスカイマークが一時的でない、本質的にビジネスがピンチに陥っている状況が見て取れます。

この有価証券報告書が公表された時点では、エアバス機の購入キャンセルに関わる損害賠償金問題は顕在化しておらず、その前から経営が苦しかった状況ということです。

[スカイマーク:大幅赤字転落(以降単位は全て百万円)]

経常利益_skymark

 

当期純利益_skymark

純資産で企業のディフェンス力をチェックしよう

企業の資産とそれをどういった資金源で賄っているのかをみるのが、貸借対照表やBSと呼ばれるものですが、その中の一番下の項目です。企業の儲けというのはここに溜まっていきます。これがゼロを下回ると債務超過といって、もはやだれもお金を貸してくれないので倒産とほぼ同義です。なので、当期純利益が赤字でそれが継続的に続くようだったらあと何年くらいで純資産を食いつぶすか確認してみてください。

例えば、今年度のスカイマークには約447億円の純資産がありました。つまり今年度の当期純利益の赤字約18億円が24年続いてもなんとか定義上は倒産せずに耐えられるはずでしたが、この状態にエアバスからの損害賠償請求約840億円がドカンとのってきました。当然、損害賠償請求が効力を持った瞬間にスカイマークは債務超過になり倒産してしまうわけです。

[ここに、超大型旅客機A380の発注キャンセルの損害賠償金約840億円請求されたら一発アウトなわけですね]

純資産_skymark

現預金額と有利子負債金額で借金の大きさをチェックしよう

有利子負債という言い方は聞きなれないかもしれませんが、要は借りているお金です。借金だったりリースだったりします。現預金は貸借対照表の資産の項目に、有利子負債は負債の項目にバラバラに含まれますが、これはセットでみます。なぜなら、現金があれば有利子負債は返せますからね。企業によっては銀行とお付き合いするためだけに借入をしているところもあります。

さて、有利子負債から現預金額を引いた額と、純資産の額と比べてみてください。いくら純資産の絶対額が大きくても、それを4倍も5倍も上回るような有利子負債を負っていると、儲けが返済のペースにおいつかない可能性があります。

ただこれに関しては、では何倍までなら安全なのかなどの明確な目安はありません。業界や企業の成長スピードなどとも関係しています。また、借入がなければよいのかというと、それでは企業としてあまり効率的な運営の仕方をしていないというのがファイナンスの考え方です。

スカイマークの場合は、有利子負債が約20億円、現預金が約71億円ということで大幅に現預金の額が上回っている、実質無借金経営の会社です。この点に関してだけ言えば、スカイマークは安全性が高かったんですね。

[現預金:7,065]

現預金_skymark

[有利子負債の一覧:合計2,030百万円]

有利子負債_skymarkちなみに、状況が切迫している企業の有価証券報告書には「継続企業の前提に重要な疑義」がある、と記載されてしまいます。これは「会社の経営が危ない」という意味の決まり文句で、いわゆる死亡フラグですね。

財務諸表の後ろの「注記事項」というセクションに記載してありますが、これが書かれていないかも念のため見ておきましょう。なお、スカイマークの場合も通年の有価証券報告書時点ではそういった死亡フラグがたっておりませんように、最新の四半期ベースの有価証券報告書を確認してください。

通年の有価証券報告書には当然ながら1年を通しての企業活動が総括してあるため、事業を理解するためには有用な情報源ですが、時期によっては最新の情報が載っていない可能性もあることにご注意ください

[スカイマークの死亡フラグ(本資料のみ四半期報告書-第19期第1四半期(平成26年4月1日-平成26年6月30日)より]

継続事業の前提に疑義_skymark

さて、主にH26年3月期、エアバス機の購入キャンセルに関わる損害賠償金問題が顕在化する前のスカイマークの財務諸表を主にみてきました。

財務諸表からは、当期純利益と経常利益が赤字だから抜本的な対策をする必要があることや、実質無借金経営で、赤字額と比較して相応に手厚い純資産があったことがわかりましたが、これだけでは早期の倒産という事態までは見通すことはできませんでした。ただ、こういった情報が頭に入っていることで、「スカイマークに損害賠償請求約840億円」というニュースを聞いた時点で、「ヤバい」という感覚が生まれるはずです。

なお、スカイマークと同様の大型の損害賠償請求の例は、最近ニュースにもなっています。

米企業が原発廃炉に関連して三菱重工に賠償9,300億円求める

ちょっと前には武田薬品にも、1兆円超の賠償を求める訴訟がありました。

それぞれ、2014年度末の各社の純資産が1/2と1/4が吹っ飛ぶ金額です。事業規模が大きければその分抱えるリスクも大きいということで、紹介した指標の絶対値が大きければリスクが低いとはいえないです。会社がなくなってもいきていける心構えが大事ですね。

基礎的な財務情報を頭に入れておくと、日々ニュースに対する感度や会社の事業に対する理解が深まりますので、自身の関心が高い会社の基礎的な財務情報は是非チェックしてみてください。