【企業研究】 サントリー食品インターナショナル

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上場企業であれば必ず入手可能なIR資料にはその会社に関する事実と戦略に関する情報が詰まっている。IR資料から読み取れる企業のグローバル戦略と足元の実情について考察するシリーズ。今回はペプシネックスやオランジーナといったヒット商品でおなじみの、サントリー食品インターナショナル(以下、サントリー食品)。

(参照しているIR資料はこちら)

サントリー食品の戦略に入る前に、サントリーグループの全体感を少し。
サントリーグループは約2.5兆円と日本で最大の食品・飲料の企業だが、取り扱う商品によって会社を分けている。例えば「ジムビーム」や「響」といったスピリッツはビームサントリー社で、「プレミアムモルツ」などビール類はサントリービールで、そして主にソフトドリンクや缶コーヒーを扱うのが、サントリー食品インターナショナルという会社だ。
また、中国市場は別格のサイズということなのか、これは別の会社で中国匯源果汁集団有限公司という地元有力企業と一緒に市場開拓しており、サントリー食品インターナショナル自体は中国では展開していないと考えられる。一言でいうとサントリー食品は、サントリーのソフトドリンクを世界で製造販売する会社(中国以外)ということになる。

サントリー食品の直近売上高は1.2兆円と、グループ全体の売上の約半分を占める中核企業だ。サントリーグループといえばお酒のイメージも強いが、酒類の倍も実はソフトドリンクで稼いでいる。また、同社はグループ唯一の上場企業であるが、株(≒意思決定権)の約60%をグループ(グループの株の90%を創業家が保有)が持ち、社長は創業家メンバーが務めている、がっちり創業家がリーダーシップを取る会社だ。上場したのは、会社の買収等に積極的に投資するための資金を集めるのが主な理由とされており、創業家が考えるグループ全体の戦略を踏まえてどんどん積極的な仕掛けをするに違いない。
サントリー食品の戦略を見るときにはその背後にあるグループ全体の戦略も意識してみると何か面白い観点が見つかるかもしれない。

それを踏まえた上で、サントリー食品のグローバル戦略を見て行こう。

欧州とアジアが成長をけん引

まずは、過去の海外売上高推移から。
キャプチャ1
上場したタイミングの関係上、過去3年しかデータがないが、その短い期間の間にも海外売上高は約1.8倍になり、全体の43%を占めるまでに成長している。
次にその内訳をみてみよう。
キャプチャ2その成長を特に牽引しているのが、欧州とアジアであることがわかる。

欧州事業はM&Aで成長

欧州からまず。売上高が2014年度に2倍になっている。これは2013年度にグラクソ・スミスクライン社から飲料ブランドを2つ買収した効果だ。買収時の資料によれば、2つのブランドで売上高が約800億円なので、売上増加要因の大半だ。もともと、サントリー食品の欧州における基盤は2009年にオレンジーナ・シュウェップス・グループ(あのオレンジーナの)を買収してできたものだが、同社が強かったのはフランスやスペインといったラテン圏であった。

一方、グラクソ・スミスクライン社から買収した2ブランドはイギリスでの売上が大半のため、地理的補完関係を狙ったとのこと。また、同時にイギリスが旧宗主国だったナイジェリアやマレーシアでの販路もあり、併せて新興国地域におけるプレゼンスの強化も狙ったようだ。

アジアもM&Aで成長

もう一方の牽引役であるアジアのほうだが、こちらも買収戦略が売り上げ増に一役買っている。先のグラクソ・スミスクライン社からのブランド買収もそうだが、2013年に重要な事業パートナーであるペプシコ社(あのペプシコーラの)とベトナム市場におけるジョイントベンチャーがスタートし、ペプシコ社がベトナムで既に上げていた売上高を取り込むことができたことが要因の一つと考えられる。ただ、アジア地域は市場自体が大きく成長しているため、欧州に比べると自前商品の伸びも貢献しているだろう。
各地域の利益率を比較するとアジア地域のみ低いのは、販促費をかけて営業攻勢をしているからだろうか。公表資料ではそこまでは読み取れないが興味深い差である。現地ディストリビューターから自前の営業体制に切り替えるとの記載もあるので、そこで利益を吸われている差かもしれない。
キャプチャ3

動きがとりづらそうな米州

米州事業についてもさらっと。
こちらはペプシのボトラー事業がメインだと思われる。
ボトラーというのは、ペプシコから原液(ペプシコーラのもと。レシピはひみつ)を購入してそれをボトルに詰めて、決められたエリア内で販売する事業だ。もちろん原液はいじれないし、決められたエリア以外は売ってはいけないことになっているのが通常なので、サントリー食品にとってあまり経営の自由度が高くない市場だといえる。他のボトラーの買収をして拡大するという手段もあるだろうが、安定して手堅く稼げる地域という位置づけだろう。

このような現状を踏まえ、サントリー食品では今後の経営戦略のポイントとして3点挙げている。

  • 重点エリアにフォーカス
    • 既存エリアに、新興市場を加えた約20カ国に重点
  • 各エリアで存在感のあるポジションを確立
    • ブランド強化、新価値商品投入により需要を創造
    • 流通基盤、生産基盤の強化
    • 生産コスト削減を継続
  • 統合的な発展への進化
    • グローバルチャレンジブランドの育成

まず、重点エリアの20か国というのは個別に開示されている資料が見当たらなかったが、既存エリアとは、日米欧、そして新興市場はアジア、中東・アフリカ、南アメリカの国を指すようだ。収益が安定している日米欧でしっかり稼ぎ、新興市場開拓に投資するというニュアンスだろう。

各エリアで存在感のあるポジションを確立することについて、「ブランド強化、新価値商品投入により需要を創造」は読んでのごとくだが、その他2点については買収後の整理整頓ということではないだろうか。当然ビジネスを買収したときには、全体でみて一番効率のいい物流体制、営業体制だったり、資材調達体制ではない。例えば、ボトルの形がたくさんあるとそれだけコストが嵩むので、統一してコスト削減しましょう、といったような話だ。

そして、最後の統合的な発展への進化の具体的な施策として、「グローバルチャレンジブランドの育成」があげられているが、具体的にはどういうものなのかまでは説明がない。コカ・コーラやペプシコーラのように世界中で売れる商品を作ろう、育てようということだとするとワクワクする話だ。

[まとめ]
– ソフトドリンクを世界で製造販売する会社(中国以外)
– 日米欧でしっかり稼ぎ、アジア、中東・アフリカ、南アメリカを攻めていく
– 攻める手段としては企業買収が常套手段
– 買収後は事業を効率よく整備して利益を出す