【企業研究】日清食品ホールディングス

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上場企業であれば必ず入手可能なIR資料にはその会社に関する事実と戦略に関する情報が詰まっている。IR資料から読み取れる企業のグローバル戦略と足元の実情について考察するシリーズ。

(参照しているIR資料はこちら)

今回はカップラーメンでおなじみの日清食品ホールディングス(以下、日清)。日清ブランドのカップラーメンだけでなく、「一平ちゃん」でおなじみ明星も2006年に買収していて傘下のブランドとなっており、即席めんの日本市場シェアはダントツの1位。今まで「カップヌードル」か「一平ちゃん」かでケンカした友達がいれば是非仲直りして欲しい。

過去の業績推移

日清は昨年度売上高4,176億円で食品関連企業のランキングで18位の会社である。まずは過去5年の海外売上高の推移をみてみよう。

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海外売上高は過去5年で約60%増加し、会社全体の売上の20%を占めるところまできている。2013年に日清は中期経営計画(https://www.nissin.com/jp/ir/management/business_plan/)を発表しているが、海外売上高についてはちょうど目標としている地点をクリアしそうな状況だ。そして、この延長上に2020年度には海外売上高が全体の30%、2025年には50%を占める姿を描いている。

利益率の低い海外事業

一見すると順調な日清のグローバル展開だが、国内と海外とで利益率を比較感すると順調に見えるグローバル戦略にも課題が見えてくる。

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上記、中期経営計画の中で2015年度の営業利益率6.9%(ROEとは別に)の実現を謳っているが、海外での利益率の低さが足を引っ張っているのが見て取れる。ざっくりとこのような目標と足元の状況を頭に入れた上でもう少し細かく海外戦略の中身を掘り下げていこう。

中国は稼ぎ時、アジアは攻め時、米州はイマイチ

2020年度には海外売上高が全体の30%、2025年には50%を占める姿を描いているが、これを実現するために2015年度に実施することとして下記3点を挙げている。

  • 中国地域の更なる販売強化と生産拠点の拡充
    • 海外成長のための収益源
  • 市場成長が期待できるアジア地域でのプレゼンスアップ
    • 中長期目線での収益基盤の構築
  • “NISSIN” “CUP NOODLES”ブランドのアイデンティティ統一
    • グローバル化の共通言語

下段部分が直接的な目的ということになるが、数字と照らし合わせるとおぼろげながらその意味するところの理解が深まる。海外売上高と営業利益率のエリア別の詳細を見てみよう。

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まずパッとわかることは、中国が海外事業の稼ぎ頭であること。営業利益率は10%近くと、日本国内を上回る収益力の高さ。恐らくブランド戦略がうまくいっており、規模拡大と利益確保が両立できているということなのだろう。7元(≒140円)のカップヌードル商品が売れているとの記載があるが、ローカル食堂等でのご飯が10元くらいであることを考えるとそこそこいいお値段だ。

一方、米州ではというと意外なほど利益が出ていない。これは中国とは対照的に全く利益を載せられない市場構造に起因しているかもしれない。米州で最大の市場は当然米国ですが、ここの最大手スーパー、ウォルマートでは日清カップヌードルが0.5ドル(≒60円)、マルちゃんに至っては12食で2ドル(≒240円)と衝撃的な安さで売られてしまっている。カップヌードルの値段が中国の半分。一人当たりのGDPの水準の差を考えるととんでもない価格差だ。

上記の仮説が正しいかは置いておいて、中国は現時点でかなり儲かっている。さらに、日清は中国大陸に存在する人口300万人以上の都市60都市(!)に営業拠点もしくは代理店を置くことを目指してきたが、これを丁度昨年度達成。中国市場においては面的地理的な拡大は一服し、営業をかけまくって売りまくることに専念する時期が来た。そしてそこで生まれた収益を他の市場開拓の原資にするということを2015年に実施することを①は指していると思われる。

アジア市場の攻め方

さてアジア地域だが、赤字垂れ流しである。これは、2015年に実施することの②が示唆するとおり有望な市場であり、面的地理的開拓が終わっていないため広告宣伝や販促に使うお金が売上に比べて大きいということだと考えられる。赤字規模がまさに広告宣伝や販促コストに対応しているとすると、アジア地域での売上を今の米州や中国並にする、別の言い方をすれば今の売上を4-5倍に伸ばすという目標があるように見える。かなり攻めている様子が伺える。

そして、その本気度を示すように昨年から今年にかけて日清が動きやすいような環境を整えている。フィリピンでは現地企業とのジョイントベンチャーでの影響力を強めていたり、インドネシアでは現地企業との提携関係を切っている。同時にシンガポール、インド、ベトナム、タイにおいては三菱商事と組んで攻めることを発表している。現地資本ではなく三菱商事と組むことがうまくいくのか興味深いところだ。(余談だが、三菱商事は日清が一番カップラーメンを売っている相手であり、大株主でもあり、役員も派遣されているという、非常に濃ゆいお付き合いをされている先。)

そして、このアジアシフトにつながる施策が2015年に実施することの③だと考えられる。これまでは、特にアジアでは地元の独自ブランド中心だったのだが、より日本の商品ラインも入れていきたいとのこと。また、インスタントラーメンが生まれたように日本をこれからもイノベーションの中心としていくと意気込んでいる。それら開発し、投入する商品が米州でのようにたたき売りされず、価格競争に巻き込まれないように売り方や商品イメージをしっかり日本からコントロールしようということだと思われる。

まとめ

  • 現在20%の海外売上高を2025年までに50%以上にすることが目標
  • 中国、アジアが成長のドライバーになっていく
  • 中国は稼ぎ時、アジアは攻め時、米州はイマイチ
  • アジアは地元資本との提携、三菱商事との提携、自前を組み合わせて攻める
  • 商品戦略は日本中心

今回取り上げた、中期経営計画は2013年に策定されて今年がその計画最終年に当たるので、来年には新しい計画が策定されるはずだ。現状を踏まえて、グローバル戦略がどのようにアップデートされるのか楽しみである。