東南アジアのパイロット事情 〜マレーシア人を泊めてみた体験記〜

1046

お金の発生しないAirbnbとでも言うのでしょうか。旅のSNS、カウチサーフィンってのがあります。

http://find-travel.jp/article/4012

先日初めてそのホストをやってみました。そしたら案外悪いもんじゃなかったので、日記を載せます。

(ちなみに厳密に言うと、わたしがカウチサーフィンに登録しているわけではなく、ホストをしていた友人の要請で急遽わたしがピンチヒッターをした)

#1

5月のとある夕暮れ。都内の大学生よろしく狭いワンルームの部屋で机に向かっていると、LINEの受信を告げる表示が目に入った。

飲みの誘いならスルーしようと思って差出人に目をやると、相手はこの1年以上連絡を取っていなかった友人だった。

「ういっす。マレーシアから旅行で来てる人いるんだけど、適当に3人でhangoutしない?」

「おひさ。あり。」

こうして特に湿っぽいやり取りがあるわけでもなく、1年ぶりのLINEから1往復で遊ぶことが決まった。

ちなみに彼とは大学に入学した時に知り合った。世界を飛び回るエリートの息子であり都内出身の彼は、地方出身上京組のわたしからすると、綺羅を纏った貴族であるかのように見えていた。

久しぶりに会うのが若干楽しみでもある。

当日、なぜか「香港」と書かれた青いポロシャツを身に纏って、四ツ谷駅にマレーシアからの旅人(リー)は佇んでいた。

筋肉質で中背な彼の姿は、ステレオタイプ的なアジア人をちょっとゴリマッチョにしたイメージ。長身イケメンではないが、幸いなことに私は男性なのでそんなのはなんだって構わない。

1年以上ぶりに直接話す、入学当時は貴族のように感じていた彼は、わたしが1年東南アジアで漂流している間アメリカに留学しており、すっかりwesternizeされていた。

時間は夜の10時過ぎ。駅の向かいにあるファミリーマートでビールと氷結を購入し、四谷の外濠公園へ向かう。

南国から来たはずのマレーシア人は「あったかいね」と言っていたのだが、どう考えても寒い。普通に肌寒い。

近くで大学生グループが輪になって座っていた。彼らも長袖を着て腕を抱いている。やはりわたしの感覚こそ正常で、半袖のポロシャツ一枚であったけぇと宣っている方がおかしいだろう。

3人で軽く近況報告し合い、日本やマレーシアとアメリカの違いなどを中心に雑談した。

アメリカからみたアジア、東南アジアから見たアジア。日本は世界の中でどんな位置付けなのか。

今後どんな人生を送りたいのかなど。

夜も遅かったので1時間程度で解散。いいハングアウトだった。と思った直後、LINEが入る。

「明日、あのマレーシア人ホストできる?」

こうして翌日の東京案内と、宿泊を託された。

#2

翌朝、大学が始まる前に四ツ谷駅にリーを迎えに行く。

まだ通勤するサラリーマンで溢れる前の駅前の交差点に彼はいた。完全に浮いている。レイバンのサングラスをかけ、ガードレールに寄りかかってキメ顔をしている。

しかし、青いランシューにブルージーンズ、さらに青いカットソーという顔以外全身青なinspired by ドラえもんのような格好をしているため全体として違和感満載。

「違う国行くと基本的に浮くよね。うんうん。」

荷物などをうちにとりあえず置く。

「マレーシアと違って日本の古着はしっかり着れるからおすすめだよ!日本ではどうしようもないボロボロなやつはそもそも古着って言わない」

「くっそいいカフェたくさんあるから覗いてみな!」

と言って、原宿駅へと送り出す。四ツ谷駅の路線図にローマ字表記がないため、切符を買うのに苦労していた。

夜の7時に渋谷のハチ公前でリーと合流。シーシャ吸おうぜ!と半ば引きずるようにして道玄坂へ向かう。

ウィスキーとシャンディガフを注文し、世間話を始める。

「今何やってるんだっけ?学校でてー、」

「航空学校でて、今航空会社の面接結果待ってる」

「パイロットってどうなの?」

「いいよ。マレーシアで月30万円もらえる。あーでも台湾行けばその倍から3倍はもらえるから、マレーシアの航空会社で経験積んでから転職する人多いね。」

「そういえば事故あったよね。あのあとマレーシアの航空産業どう?」

「だめだね。政府がサポートしてるから持ってるけど、減収減益。」

「日本のエアラインには応募した?」

「したけど、日本語すごく話せないとだめだから無理だった。ANAもJALも日本語検定でトップじゃないと無理だし」

「とはいえパイロット不足で取り合ってるはずなんだけどな。変なの。」

「台湾とか韓国は英語でいいんだけどね」

「どう?2020年にマレーシアは先進国入り目指してるけどどうなの」

「いやー、きびしいっしょ」

「ナジブさんの問題あったけど、あれまだonなの?」

「うん。彼のせいで為替下落したし、首相の権限が強くて誰も引きずり下ろせない。おろせるとしたら諸外国から圧力をかけてもらうしかない」

「マレー系のことどう思ってる?」

「優遇されてるし怠けるよね。正直な話、イギリスの統治下にあったほうがよっぽど国は発展したと思う」

「といえば、ポルトガル、オランダ、イギリス、日本って占領されてきたけど、彼らに対してどう思ってる?」

「祖父の世代は日本が苦手な人は多いよ。冷酷な仕打ちを見てきたから。でもあの時代教育がしっかりしてなくて、世界がどうなってるかしらなかった。わたしの父の世代くらいからは日本に対してネガティブな印象を持つ人はあまりいない。当時がどんな時代で、日本がどういう状況にあったのか知っているしね。」

「てか、店員の子かわいいね」(マレーシア人)

「へっ?」

「話したい」

「わかった。お姉さ〜ん」

こんな感じで2時間くらい過ごした。

さすがに空腹にもなり、つけ麺を食べに行く。汁と麺が分かれているタイプのものは初めてだったらしい。

めっちゃうまいと喜んでくれた。高校時代からお世話になっている系列のお店なので嬉しい。ちなみに魚介系のつけ麺。

日付が変わる前に帰宅する。非常に狭い部屋だし、布団も2セットない。奇跡的に掛け布団が4枚ほどあったのでそれを使ってもらった。

歩き疲れたので特に何をするでもなく、電気を消して眠る。

5分も経たずに静かないびきが聞こえてくる。早すぎだろうって。

翌朝、わたしが大学に向かう時間に合わせて一緒に家を出る。

夜に夜行バスで京都に行くらしいく、そのチケットの発券をコンビニでするらしい。

おそらく日本語メニューしかないので手伝う。

しかし

何回トライしても発券されない。

大学の時間が迫るので、諦める。

コンビニをでて、早くも初夏の気配漂う朝の交差点へ向かう。

「どこ行くの?」

「とりあえず新宿へ」

「歩いてもいけるし電車でもいけるけど」

「いろいろ見たいから歩いてくわ」

「おっけ、じゃあっちね」

「泊めてくれてありがとう」

「問題ないよ!」

「マレーシア来た時は連絡してね。家買ったから泊めてあげるから!」

「あざっす。じゃ気をつけて!」

「またね」