働くために金を払う時代が来る?ベーシックインカム導入検討の衝撃

916

先日、フィンランドがベーシックインカム導入に向けた取り組みを始めることが報道され大きな話題となりました。
全ての成人に月々800ユーロ(約11万円)を非課税で給付するパイロットプログラムを2017年に導入する検討を始める構想で、現時点で69%の国民の支持を得ているので実現の可能性も高いといえます。

ベーシックインカムとは

詳細はこちらのわかりやすい解説ページに譲りますが、年金や失業保険、児童手当等もろもろの複雑な社会保障をシンプルにすることでトータルの社会保障コストを下げることが主なメリットとして語られる一方で、財源の問題や働くインセンティブをなくす等のデメリットについても指摘されている社会保障制度です。

ベーシックインカムは日本にも来る

しかし、人工知能とロボットの進歩とともにいずれ日本にもこの議論の俎上に乗る日がくるように思います。こんなリサーチ結果がでました。
10-20年後に、日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能になるという野村総研のレポートです。

もちろん、理論的にはという話で政治経済上の状況でスムーズにいかないとは思いますし、そもそも「今ある」仕事ということでもあるので、それがそのまま失業率になるというわけではありませんが、いずれにせよ、人工知能とロボットに押し出された労働力は高い失業圧力にさらされるでしょう
(そして失業率が高まると社会不安が高まるので放置されることはないでしょう)

仮にレポートの半分、現在の労働人口の25%(=1,600万人[※1])が失業したとすると、それは例えば15年後、2030年の全成人人口[※2]の15%にあたり、年金受給者である65歳以上の高齢者人口の全成人人口に対する割合35%とあわせると50%もの成人が社会保障費で生きている環境において、そういう維持コストの高い仕組み(ペーパーワークやITシステム含むいわゆる役所の仕事)を維持するくらいなら、いっそ、という可能性はありうるのではないでしょうか。
仮に導入された場合どうなるのでしょう。

もう「生活のため」に働く理由はない(かも)

フィンランドでの給付額11万円をベースに考えます。
一人当たりGDP(購買力平価)[※3]比で換算すると、日本では10万円くらいの水準です。
2014年時点で日本の単身世帯の1か月当たりの支出[※4]は16万円です。
やや足りないですが、フリーミアムモデル、シェアエコノミーの広がりや、空き家が既に問題化していて家賃が下がること等も合わせて考えると、人口が減少する将来これで生きて行けちゃう可能性もあります。

そこでより先鋭化する問いが、「なぜ働くのか?」という問いです。
(もちろん、11万ぽっきりじゃ。という人も多くいるので、あくまで働く意味の重みづけが変わるイメージです)

仕事がエンタメ化し、企業価値がメタ化する

おそらく、終業後の○○だけが楽しみで勤めてる!みたいな方は早々に労働市場を自ら去る一方、労働市場に残る人もいるでしょう。
多くは、働きがいを感じてるひとかと。

やや古いのですが、2010年に実施された「働きがいに関する意識調査」では、働きがいに影響を与える要因として下記が上位5項目として挙げられています。

  • 成長実感 :今の仕事を通じて、成長していると感じていますか。
  • 達成感 :今の仕事を通じて、達成感を感じていますか。
  • 力の発揮 :今の仕事を通じて、自分の力が発揮できていると感じていますか。
  • 価値実感 :今の仕事は、取組む価値があると感じていますか。
  • 適応感 :今の仕事は、自分の適性に合っていると感じていますか。

これを踏まえて、ベーシックインカムが企業の競争力に与える影響を考えてみます。
こういう体験や感覚を与えられない組織は製品サービスうんぬんの前に、人が早々に去り、淘汰されるということなのではないでしょうか。
そうなると、企業の競争力は商品とか技術とか分野というより、上記のような体験や感覚をいかにプロデュースできるかによってくるので、「What we do」より「Who we are」のコンセプトを磨くことになるんでしょうね。
例えばサイバーエージェントでは、ウェブ広告代理店とかブログ運営、ゲーム会社ではなくて、「変化対応力を強みに、自己成長を続けている会社」を謳うというようなイメージ。

CA_About

一方、ベーシックインカムがはたらきかたに与える影響。
さっき、働きがいに影響を与える要因を見て、「キャリアポルノ」っぽい響きするなと思いませんでした?
「キャリアポルノ」とは言い得て妙。働くことがピュアに楽しいものになっていく。
成長実感気持ちいい!達成感はんぱねー!と。

自分本位の働きがいで働くひとはいずれ働くために金を払うことになる

考えを一歩すすめると、もう労働の対価って成長実感や達成感であって、お金ではなくなるのかもしれない。むしろ成長実感や達成感を味わわせてくれるいい企業にはお金を払ってでも入るのかも。
斬新な市場がここで登場しました。「労働エンターテイメント市場」です。
既にこの構図ってありますよね。実質インターンだけで実務まわしてる会社とか。
キッザニアとか。(そうか大人のキッザニアか)
成長実感や達成感という自分本位の働き方に面白みを感じてるんだとしたら、それは搾取される対象になるんでしょうね。
そして働いた対価を得続けるのは、社会をよりよくすることに興味があるひとだけ。

今就職を迎えている学生が、もしかしたら脂の乗り切った40代には直面するかもしれないこのような世界。頭の片隅においてみてはいかがでしょうか。あなたは何のために働いていますか?

 

※1. 労働力調査(基本集計)より、平成27年(2015年)10月時点における就業者数は6432万人
※2. 平成24年版 高齢社会白書 (2)将来推計人口でみる50年後の日本より
※3. IMFデータより
※4. 家計調査報告(家計収支編)―平成26年(2014年)平均速報結果の概況より